電流

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昭和56年(1981年)春。 校舎の3階の窓から見える満開の大きな桜の木から、淡いピンク色の花びらが うららかな春のそよ風に乗ってひらひらと舞っている。 それは、中学2年になる年の春休みに転校して、はじめての理科の授業だった。 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…… ガラッ 始業のチャイムが鳴り終わると、ほどなくして男性教師が教室に入って来た。 身長は175cmくらいだろうか。 細身で黒髪は短くも長くもなく、眼鏡をかけ、とても真面目で知的な印象。 ノーネクタイの白いシャツが清潔感を醸し出している。 「起り~つ! 礼! 着席!」 みんなが一斉に着席した時、先生はふと一瞬だけ眼鏡を外した。 んっ? うわぁ~、カッコイイ!! 切れ長の綺麗な二重まぶたで、眼鏡を外した方がずっと素敵だと思った。 「おはよう! 今日から君たちの理科を担当する大河内です。よろしく! もし何か分からないことがあったら、遠慮なく聞いてな」 大河内先生か~。なんだか名前も素敵! 先生は一人ひとりの顔を覚えるようにゆっくりと歩きながら話し、窓際の後ろから2番目の席の私に だんだんと近づいて来た。
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