交流

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「先生、何か……?」 恐る恐る聞くと…… 「もうすぐ、ア・テスト(注1)があるだろ?」 「あっ、はい……」 「葉山、理科の勉強の方、大丈夫か?」 「あぁ……」 小学校の頃は理科が好きだったけれど、中学に入ってから、さっぱり授業について行けなくなっていた。 「だろ? この前の小テスト、42点だったもんなぁ。 だから、こんなものを作ってみたんだけれど……」 先生はさっき見ていた、机の上に置かれたノートを私に差し出した。 受け取ってノートを開いてみると…… 最初の左のページだけ理科の問題集のコピーらしきものが貼ってあり、その右のページ以降はノートの罫線のままだった。 「週に一度くらいのペースでこのノートで理科の問題を出すから、答えを書いて渡してくれればチェックして、分らないところは教えようと思うけれど…… どうだろう? あっ、それぞれの右のページは空けておくから、質問とか悩みとかその日の出来事とか、何でも自由に書いて欲しい」 えっ!? 私に特別に?? 先生は眼鏡の奥から綺麗なやさしい眼差しで真っ直ぐ私を見つめている。 また、胸がキュンッとなった。 「やっ、やります! お願いします!!」 理科の勉強の心配もあったけれど、授業以外にもこうやって先生と交流できることが何より嬉しかった。 ※注1 『ア・テスト』(アチーブメントテスト) かつて、神奈川県で中学校2年生の3学期の3月頃に実施されていた、公立高校入学判定に極めて重要な試験。 教科は、国語・数学・英語・理科・社会の主要5教科+美術・体育・音楽・技術家庭の実技科目4教科の合計9教科。 このテストは、神奈川県内の公立高校の入学判定に最大で25%(内申点と合算すると75%)反映されるという非常に高い比重を占めるものだった。 そのため、実質的に2年修了時に志望校が絞られたが、県外からの転入者に対する救済措置が全く無く、他にも問題点が多く指摘されたため、1995年頃から段階的に廃止措置がとられ、1997年には全廃された。
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