21世紀

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時計を見ながらスーツを整えた。娘と幸子に会いたい。ただそれだけでこのエレベーターに乗ることにした。乗れるのは僅かな人のみのこのエレベーターは時空を飛び、過去に行ける。ただし滞在時間は一週間。それを過ぎれば自分の存在はこの世の中から抹消されるだ。危険を知りつつここにきた人たちは何かしらの深い事情を持っている。隣にいた一人のおばあさんに話しかけられ、愛想笑いを顔に浮かべた。幸子。沙蘭。今行くから。お前たちを守るから。エレベーターの扉が開いた。 飛騨はチラリと隣の中年の男性をみた。どこかでみたことのある人だ。確か……病院で。どこの病棟にいた人だろうか。 看護師をしている飛騨は赤星大学病院に勤めていた。彼女をどうしても救いたい。病院では人が死ぬことなんてよくある。でも。彼女は死んではいけなかった。その思いだけでここにきた。中年のその男は一人のおばあさんに話しかけられていた。 悪い予感がする。開くエレベーターを気にしながらも周りを見渡す。全てが計算されているように見える。 それは見事に的中した。
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