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同じ学校に通っているのだから、俺たちは、当たり前のように顔を合わせた。
あいつについて知ったこと、名前と、クラスと、誕生日、それから、靴箱の場所。
友だちはたくさんいて、あいつと同じクラスに幼なじみがいるらしいこと。
あと、あいつは、女の子だということ。
俺のことは、知られてないこと。
「父さん!」
医者をしていて忙しい父と話ができるのは、稀で、見たら捕まえるのが、俺のモットーだった。
「入学式のとき、公園でしゃべってたのって、あれ誰?」
「あー、父さんの友だち。近くで食堂やってるヒトだよ」
「食堂……。今日、そこでごはん食べたい!!」
「??杏須に会いたいのか?」
「あんす??」
「父さんの友だち」
「じゃ、なくてっ!!」
あいつが覚えてる、俺との初対面。それが、これだ。
俺は、父さんと母さんと三人で、あいつのウチの食堂に行って、改めて、自己紹介した。
「こいつ、ウチの息子。俺に似て、イケメンだろ?」
恥ずかしげもなくそんな紹介をする父親の言葉など、俺は半分聞いていなかった。だって、目の前に、あいつがいる。
俺は、目が離せなくなっていて、あいつはあいつで、観察するみたいに、俺をじっと見つめていた。
要するに、俺たちはしばらく見つめ合っていたんだ。
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