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「つーか、杏須……女の子だったよな?ウチの病院で産まれたのって」 「そう」 「なんか、お前そっくりなんだけど……」 「女の子は、父親に似た方がいいんだってさ」 「まあ、美形は美形だけど……」  父さんの言うとおり、間近で見たあいつはとてもキレイで、瞳はまっすぐ俺を見つめていて、体中が心臓になったみたいだったのを覚えている。 「なまえ、なに??」 「あ、つじぐち、りょうた」 「りょうた……」  初めて名前を呼ばれて、情けないくらいドキドキしていて、きっと最高に、カッコ悪かった。  あいつは、最高にキレイでカッコ良い笑顔を見せた。 「おれは、りゅう」  うん、知ってる。  誕生日も知ってるし、友だちの名前とか、クラスとか靴箱の場所とか。  でも、俺のことは、知らないことも。 「おれ、3くみ!」  知ってほしくて、気にしてほしくて。 「そーなの?おれ、1くみ~」
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