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干潮
潮が引いた昼下がりの磯場。
初夏の日差しに温む岩場を足裏に感じる。寄せては返す波に洗われて丸みを帯びた岩は、所々に海藻が生えていて滑りやすい。
だが、幼少期からここを遊び場としてきたオレ達にとっては、勝手知ったる庭も同然。滑らかな岩を選びながら、波打ち際に辿り着く。
海面までの高さは約三メートル。それほど高くはないが、落下中に色んなパフォーマンスが可能な最適距離。先頭の少年が突端に向かって小走りに駆け寄ると、その勢いのまま宙に身を踊らせた。
空中で前方宙返りを決めた小麦色の痩身が、翡翠の海原深く吸い込まれていく。
午後の海に一番乗りを飾った彼に負けじと、嬌声を上げながら次々にその後を追う子供達。
「もっと離れて飛び込んで。ぶつかると怪我するから」
岩場をよじ登ってきた一番乗りの少年に手を貸して引き上げながら、海面に浮かぶ子供達に声を掛ける。
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