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夕食後、彰は数枚のムラサキキャベツを細かくちぎり、小型の鍋で煮込み始めた。グツグツと鍋が煮立ち鍋のお湯が濃い紫色になったところで彰は火を止める。
「お父さん、何してるの?」
「まぁ見てな」
彰は昌弘にそう言って紙コップを棚から取り出すと、お玉3分の1くらいの紫色の液をそこに入れた。
「酢、持ってきてくれるか?」
昌弘は頷いて酢を戸棚から持ってくる。彰がそれを数滴垂らしてかき混ぜると、紫色が一気に赤色に変わった。
「へぇ。凄いね」
「ムラサキキャベツはな、リトマス試験紙と同じで指示薬のかわりになるんだ。酸性だと赤、アルカリ性だと青や緑になるんだ。指示薬の代わりになる植物って結構あるんだよ。たとえばアジサイなんかもそうだな。それにリトマス試験紙だって、もともとはリトマスゴケっていう植物からつくってるんだぞ」
「そうなんだ…」
昌弘は目を丸くしてそう言った。
「さ、さっさと検証をするぞ。食塩水、用意してくれ」
彰がそう言うと、昌弘は小ビンを持ってきた。そして「食卓塩」と書かれたビンの赤い蓋を外し、計量カップにサーッと白い粉を注いでいく。ある程度たまったところで昌弘は水を入れ、割り箸で溶かし始めた。
「食塩水、出来たよ!」
「よし、じゃあ入れてくれ!」
紫色の液に昌弘は計量カップの液体を入れ、割り箸でかき混ぜた。
「……えっ?」
昌弘は思わずそう声を漏らした。
紙コップの液体の色は、どこからどう見ても透き通った青色だった。
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