第二章・―二転三転―

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 そうして無事、謁見の間へと通された彼は、全ての事情を耳にして、困惑するばかりのトリヴァニア王を前に、静かに瞳をとじたまま返事を待っていた。 「……その、事件の解決には、どうしても地下牢へと赴く事が必須なのだな?」 「はい」  基本的には平和な国であるサウスパレス王国とは違い、それなりには戦争や紛争が起こる国であるトランシルヴァ王国の地下牢は、有事の際には、大勢の罪人を閉じ込めておけるくらいには広かった。  彼の読みが正しければ、事が起きてから、地下牢にはいまだ誰も足を踏み入れてはいない筈で、もしそうなるならば、そこにキメラの長が探している最中の、息子が監禁されている。  そう、確信もしているのだ。 「うぅむ。カイル殿の言う事だ。間違いはないと思うのだが……」  問題は、フーリッシュがどのようにして、キメラの子を連れて帰ったのかという事だ。  子供とはいえ、相手が相手だけに、普通に生きたまま捕らえるとなれば、かなりの手練でも難しい所業となる。  万が一にでもそのような事にはならないが、彼が連れてきたというのならば、少しは納得がいく話である。  だが、フーリッシュと言えば、名声に対して実力が全く伴っていない、名ばかりの騎士団長なのである。
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