14人が本棚に入れています
本棚に追加
「こやつ、持ち前の人懐っこさを利用して、上手くキメラの長を手懐けおった」
「……」
俄には信じられない言葉に、ランスロットもアルカードも、一度顔を見合わせてから、彼を見詰める。
彼はというと、相変わらずのにこにこ顔で、ジーラから聞かされる嫌味など、どこ吹く風だ。
「では、行って参ります」
そうして、無言のままでいる面々をしりめに、颯爽と漆黒のマントを翻した彼は、そのまま地下牢へと直行する。
場所は知っているため、特に誰かの案内も必要ではない。
どこの国でも同じようなもので、地下牢は広い城内の裏手、しかも隅の方に造られていて、何故か日陰にあり日中でも陰鬱な雰囲気が漂っている。
草木が風に吹かれて揺れている地面が急に石畳のものへと変わり、そこから下へ続く階段があるのだが、当然の事ながら、誰かが不用意に入られないよう、鍵の掛かった柵に遮られていた。
「カイ、良かった……! 間に合った!」
鍵をどうするか悩んでいると、背後から声をかけられて振り返る。
すると、そこには鍵を手に持ち、走ってきたのか、息を切らしているアルカードの姿があった。
「地下牢へは、鍵がないと入れない。お前の事だから、無理にでもこじ開けようとするかと思ってな」
「ああ。ありがとう」
鍵を受け取り、取り敢えず礼を述べる彼に、ようやく息を整えたアルカードが爽やかに微笑む。
最初のコメントを投稿しよう!