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――これは流石に暑い。と言うか、熱い。
綱島恭介は青いサングラスの向こうで揺らぐ先導車を見る。サイドにはチーム・ロゴとスポンサー名がでかでかとペイントしてある。少しでもロード・レースに関わるなら知らない者はいない、高品質の日本製ウェア・メーカーのマークが大きく張りつけてあり、その脇に細々としたその他スポンサーのロゴが所狭しと並んでいる。
綱島は自分の使うウェアに一瞬思いを馳せる。度重なる――とは言わないまでも、何度かの落車を経てしまったジャージからは少し肌色が覗いているはずだ。
まあそんなことはどうでもよい。とにかく、今日のレースは少なくとも優勝しなければならない。出来れば周回賞も獲得する必要がある。何故なら、金が無いからである。
ぐるりと周りを見渡す。まだローリングは解除されていないが、先頭にはプロ・チームの面々がずらりと並ぶ。
まず目立つのは「洛南建設ウェーブス」の三人。白を基調としたユニフォーム。バイクはもちろん統一されており、鮮やかな緑色が太陽を撥ねる。ベテランの大畑はもちろん、中堅の榊・横山のコンビは要注意だ。
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