第2話 生徒会長と初対面

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「なぁ、亜紀のクラスメート。七瀬クンのこと大事に扱えよ。その人、将来大臣になるかもしれない大物人物だから」 「そうそう。なんてったって都立桜が丘星華高等学校創立30年、歴代ナンバーワン超優秀児様だ!」 「先週高校に視察に来た、東大教授と生徒とのディスカッションで、教授は七瀬君を論破できなかったよね」 「あれはサイコーの見物だった」  次々よこされる、七瀬君ワッショイ説はどんどん加熱していく。 「頭いいし容姿もいいけど中身もいい人、神様みたいな人間。ぶっちゃけ、俺は完全に家庭崩壊してたんだけど、七瀬に相談に乗ってもらって、詳細は言えないけど家庭救われた。ホント感謝してる」 「私も。バカ親父が不倫して、恥を覚悟で七瀬君に話したら、バカ親父を丁寧に説得してくれて今は完全更生した」 「私は13歳の妹が家出して2週間戻ってこなくて。開君に相談したら、開君の知人の探偵事務所の人が全面強力してくれて妹が見つかった。お金も取られなかった」 「俺は死んだじーちゃんの形見のお守りを肌身離さず身に着けてんだけど、ある日学校で紛失してしまって、開君に話したら丸1日学校中を一緒に探してくれてさ。たかがお守りなんだけど、見つかった時はマジ泣きした」  語られる神様の善行の数々。 「私は自動販売機でおつりが出ないって言ったら、七瀬君にベルマークもらった」  シーン、と数秒沈黙の後。  クラスメート全員が声をそろえて言う。 「それ、なんかちょっと違くね?」  生徒同士の妙な馴れ合い。  なんだろう、このクラスの、このムダに高い統率力と一体感。  まるでこれはそう!  七瀬開とゆかいな仲間たち←2年2組  命名:晴。 「あの……やっぱり、タイヘン無理そうなので。というか神様のお守りなどという大役を、私ごとき一愚民が担うわけにはいきませんっ。なので喜んで辞退するでござる」  挙手して笑顔でキッパリ辞退宣言!  が。  辻はキレイに無視して、七瀬の足元に置かれた大きなボストンバッグを手渡し、無表情のまま言う。 「中に洗面道具一式、折り畳んだ寝袋、パジャマ、2週間分の着替えが入ってる。それから封筒の中に2週間分の生活費5万円。十分足りると思うけど足りなくなったら追加で渡すそうだ。ムダづかいはしないように、と亜紀が言っていた」 「……用意周到すぎて涙出そうです」
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