第3話 ナゾの夏眠

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「真顔で説明するのやめて。私、明日生きてますか?」  もうイヤ。  両手で顔を覆い、ヨロヨロとその場にしゃがみ込む。  拒否を態度で示してみる。 「大丈夫。その件は的確に善処すると亜紀が言っていた。それに俺を含め、2年2組全員で君を守る」 「……つじセンパイ……」  単純単細胞。  顔を上げて、思わぬカンドーセリフに目が潤む!  が。 「君になにかあったら困るんだ。一体誰が開の世話をする?」 「心配するのソコですか、ソコですね、最重要ソコ!!!!」  殴りたい。  大切な人、大事な人、良い人、神様みたいな人。  2年2組のクラスメートたちは、口々に生徒会長のことをそう言いながら、でも必要以上に関わろうとしない。  希薄というか、都会ではソレが当たり前なのか。  他人とは常に一線を引き、深入りしないで、他人に対して常に冷めていて。  2週間前、自動改札を通れずに困惑してたジブンを思い出す。  あの時は誰一人教えてくれず、舌打ちされて、唯一声をかけてくれたのは、クラスメートの七瀬亜紀。  タイヘン非常に雑な説明だったけれど、彼女に救われたのは事実。  借りた恩は返すべきだろう。 「開が待ってる。行こう」 「…………………………………………」  立ち上がり、靴を履き替えて、晴は外に出た。  視線の先に七瀬の立ち姿。  下校する生徒たちが生徒会長に気付き、帰りの挨拶をすると、機械的に軽く手を上げて挨拶を返す。とても眠そうな顔。  そうして晴たち3人はゆっくり歩き出した。  いざ、晴の家へ。  * * *  晴の家に着いたのは夕方4時少し前。  鍵を開けて部屋の中に入ると、7月の暑さで中は蒸し暑くなっていた。  すぐにエアコンのスイッチを入れる。  辻が部屋を見回しながら言った。 「結構広い部屋なんだね。全室洋室?」 「あ、はい」  賃貸アパートの部屋は2LDK。  奥に8畳の部屋、そこに机やベッドを置いている。  手前に10畳の部屋、こちらはキッチンに繋がる間取りだが、スライド式ドアがあり間仕切りできる仕様。リビングとして使用している。  七瀬には奥の部屋を使用してもらうことにする。  兄が置いていった布団一式を自分の布団と交換して、自分の布団と持ち物をざっくり奥部屋からリビングへ移動。  私服に着替えるため、奥部屋へ2人が入って行く。
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