第3話 ナゾの夏眠

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 七瀬は眠そうな顔でずっと無言のまま。とても眠そう。  少しの時間の後。  私服に着替えた七瀬と辻がリビングに戻る。  七瀬はTシャツにジーンズのラフな普段着、カッコイイ人はなにを着てもカッコイイ。  リビングに置かれたガラステーブルの上に、冷えたアイスティーを3人分、グラスに注いで出す。  晴、向かいの席に七瀬と、その隣に制服姿の辻。  初めて見る私服姿にドキドキしながら、憧れの生徒会長に晴が言う。 「改めまして。えと、亜紀さんのクラスメートの立花晴です。今日から2週間、先輩と一緒に生活することになりました。どうぞよろしくお願いします」  制服姿のままで正座して、少し緊張気味にそう話してから、ペコリと頭を下げて挨拶。  七瀬は、自分のグラスのアイスティーを飲み干した後、テーブルの上で腕枕をして、そのまま目を閉じて、グー。  それを見て辻が言う。 「こちらこそどうぞよろしく。夕食ができるまで眠るから、できたら声をかけて。開はそう言ってる」 「言ってませんよっ、一言も話してない、目も合わせてくれない……もももしや私、嫌われてるでござるか?」  うるうるっ、と涙目になりながら辻に訊いてみる。  アイスティーを飲みながら辻が答えた。 「嫌いとか好きとかじゃなく、開はただ眠い。それだけ。夏眠中は静かに眠らせてあげて」 「か……眠ってなんですか」 「冬眠の夏バージョン。日中、体は起きていても脳は眠っているから、基本反応しない。今いるこの場所も認識してないと思う。彼は7月いっぱい眠り続ける」 「…………………………………………」  それは夏バテの類?  今朝の朝礼では元気に挨拶してたケド……。  ぐるぐるとアタマの中が混乱中の晴に辻が言う。 「君、料理は作れる?」 「はい……洋食作れます」 「へぇ、洋食作れるんだ。凄いな」 「ぃえ、洋食しか作れないんです。和食は作れなくて」 「変わってるね。でも自炊できるなら安心して任せられる。ああ、そうだコレ」  ふと思い出したように。  辻は、ワイシャツのポケットから折り畳んだ紙を取り出して、差し出す。 「亜紀と俺の電話番号。なにかあったら連絡して、駆けつけるから」  そこには2人の名前と携帯番号。  果たして本当に駆けつけてくれるかどうか、今はまだ謎。
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