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「暑いから、開にこまめに水分補給させてやってくれ。俺は帰るから、あとはよろしく。ジュースご馳走様。明日の朝迎えに来るから、それじゃ」
「あ、はい。また明日」
アイスティーを飲み干した後、立ち上がると短くそう言い、辻は自分のカバンを持ち帰って行った。
あっという間の退散。
「…………………………………………」
今年の夏は、ナニヤラ最大級の変化が起こりそうな予感。
目の前で、スゥスゥと眠る王子様を見ながら、そう思ったんだ。
その日の真夜中。
開はふと目を覚ました。
目の前に広がるのは見知らぬ光景。
見知らぬ天井、見知らぬ電灯、見知らぬ布団、本棚に大量に並んだコミックス、クマのぬいぐるみ。
ここはどこだろう……。
これは夢の続きだろうか……。
いつもそばにいる亜紀の姿が見えない。
大切な妹は今どこにいるのだろう。
考えようとした時、頭の中に言葉が落ちてくる。
『なにもしない、なにも考えない、全部一切なにもしなくていい』
呪文のようなその言葉。
あの日、あの時の、約束の言葉。
言葉に導かれるようにゆっくり目を閉じる。
そして再び、開の意識は、深い深い眠りの奥底へ。
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