第3話 ナゾの夏眠

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「暑いから、開にこまめに水分補給させてやってくれ。俺は帰るから、あとはよろしく。ジュースご馳走様。明日の朝迎えに来るから、それじゃ」 「あ、はい。また明日」  アイスティーを飲み干した後、立ち上がると短くそう言い、辻は自分のカバンを持ち帰って行った。  あっという間の退散。 「…………………………………………」  今年の夏は、ナニヤラ最大級の変化が起こりそうな予感。  目の前で、スゥスゥと眠る王子様を見ながら、そう思ったんだ。  その日の真夜中。  開はふと目を覚ました。  目の前に広がるのは見知らぬ光景。  見知らぬ天井、見知らぬ電灯、見知らぬ布団、本棚に大量に並んだコミックス、クマのぬいぐるみ。  ここはどこだろう……。  これは夢の続きだろうか……。  いつもそばにいる亜紀の姿が見えない。  大切な妹は今どこにいるのだろう。  考えようとした時、頭の中に言葉が落ちてくる。 『なにもしない、なにも考えない、全部一切なにもしなくていい』  呪文のようなその言葉。  あの日、あの時の、約束の言葉。  言葉に導かれるようにゆっくり目を閉じる。  そして再び、開の意識は、深い深い眠りの奥底へ。
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