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第4話 晴とゆかいな仲間たち
翌日早朝、2年2組。
辻は教室に入ると、いつも通りクラスメートに挨拶する。
「おはよう」
「オハヨー。あれ辻君、晴たちは? 晴の家に迎えに行ったんでしょ?」
「すっかり忘れていた。それより皆にニュースだ」
その言葉にクラスメート一同が注目する。
「昨日の放課後、亜紀が2年2組と立花晴以外の全生徒に、10円の棒ふ菓子を配布したそうだ、ミニレター付きで。ミニレターにはこう書かれていた『里山出身の村人転校生が、当面の間、兄・生徒会長のお世話をします。村人転校生を温かい目で見守ってあげてください。意地悪はしないでね。七瀬亜紀』」
シーン、と数秒沈黙の後。
クラスメート全員が声をそろえて言う。
「なにソレーーー!」
自席に座り、カバンから教科書を取り出しながら辻が答える。
「さっき廊下でストーカー佐々木が話してた」
オール生徒、ディスカッションの開始。
「亜紀のクラスメートの立花晴という人物が、生徒会長の世話をする件は、昨日放課後の居残り生徒から聞いたけど。村人なのか」
「1学年5クラス、1クラス約40人×14クラス-1人(立花晴)=559×10円で5590円。中流階級の七瀬家にとって、痛手じゃない出費。ふ菓子で買収とは亜紀も考えたな」
「七瀬家って中流階級? 先週の三者面談あった時、七瀬君はお母さんがイギリスから駆け付けたじゃない。お母さんと廊下で少し話したけど、自家用ジェットで来たって言ってたよ。お母さん凄く美人だったー」
「じかよう……めっちゃ上流じゃんっ!!」
「んでもー、翌日100均のお店でお母さんとばったり会って。職場の人にあげるおみやげ買いに来た、って言って100均を大人買いしてた」
シーン、と数秒沈黙の後。
クラスメート全員が声をそろえて言う。
「あー………………」
朝から元気に自由気まま、それぞれ言いたい放題。
2年2組、通称・ゆかいな仲間たち。
命名:晴。
「ねぇ、ふ菓子10円のワイロは安すぎない?」
「ふ菓子はおまけにすぎない。この場合はミニレターの方に意味があるのさ。七瀬家公認の彼女になにかしたら許さないぞ、ってな」
「2年2組はなぜ配布されないんだ?」
「開君と同じクラスだからでしょ」
皆に混ざることなく、辻は自席で無言で座ったまま。
気付いた1人の生徒が声をかける。
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