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「あぁ上から過ぎる言い方だった、ごめんね言い直す。返せ」
「…………………………………………」
殴りたい。
無言の晴に、少女の顔が近づいて畳みかけるように言う。
「忘れたわけじゃないでしょうね。2週間前、日曜午後の人が混雑する中、地下鉄の自動改札が通れず長蛇の列を築いたあなたを救った私の言葉『自動改札機の入り口で乗車券をガー入れる、扉がガー開く、通路をガー通る。以上』」
「『ガー』多すぎ、説明雑すぎ!」
「簡潔で的確、親切丁寧な説明だわ」
そうか!
あの時の女性、とぼんやり思い出す。
自動改札機初体験の晴は、エラー音出しまくりで通れず、皆様に多大なるご迷惑をおかけした件。自分の黒歴史に追加ダ。
一気に肩が落ちる。テンションも。
「私ね、部活がソフトボール部に所属してるんだけど、部員全員で今日から軽井沢で2週間強化合宿があるの」
「へぇ、行ってらっさい」
「合宿中は家に帰れないから、その間、あなたの家で兄を預かってほしいの」
「ハ?」
突然よこされた突拍子もない言葉に、ぼんやりしてた頭が一気に覚める。
「たった2週間だけ私の兄を預かってほしい」
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