第3話

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永遠に聴いていたいと思わされたその歌は、実際にはどれだけ聴けたのだろう。 気がついたときには目の前にルーシェンがいて、その表情は俯いてしまって窺い知れなかった。 ルーシェン、と声をかけようとした時。 「ノワさん…僕…貴方に謝らなければならないんです…」 先に口を開いたルーシェンの声は、今の見事な歌声の持ち主の同一とは思えない程に暗く沈んでいた。 「僕、先の満月の時…てるてる坊主作りませんでした。晴れて欲しくなかった。満月の夜が来たら、貴方は帰ってしまう。もう逢えなくなってしまう。ノワさんは、妹さんがご病気で、それなのに、僕っ…」 ポツポツと砂の色が変わる。空は快晴で、未だ見事な満月が夜の闇を照らしている。 「僕、あの日雨が降って嬉しかった…僕、最低なんです、ごめんなさい…ごめんなさっ…」 その続きは、聞けなかった。 震える肩を抱き寄せ、骨が軋むほどに強く抱きしめたせいで、ルーシェンの言葉はノワの胸に阻まれて消えたから。 「…俺も、同じだ。あの日雨が降ったから、もう少し君といられると喜んだ。俺も、最低だ…」 ルーシェンは時折ごめんなさいと繰り返しながら、ノワの腕の中で嗚咽を漏らしていた。 妹の容態が急変したのは、きっと罰だったのだ。愛する妹のためにここへ来たのに、自分の恋に溺れたことへの罰。 ノワは静かに一雫だけの涙を流した。
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