第3話

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どれくらい、そうしていただろうか。ルーシェンがそっとノワの胸を押し返した。 「ノワさん、これ。」 そして差し出されたのは、ルーシェンが握りしめていた小瓶。 中には、透明な液体。 海水だ。 二つの満月の力を得た人魚が、治癒の力を宿した海水。 ノワが遠路遥々探しに来た、人魚の涙。 「味はただの海水だから、すごくしょっぱいから…飲む時は気をつけてって伝えてくださいね。」 そして、腕をくいと引かれる。然程強い力ではなかったが、抗わずに顔を寄せると、そっと触れるだけのキスをされた。 「僕、人魚だけど、貴方は人間だけど…貴方のこと、愛していました。」 さよなら。 囁くような告白と別れの言葉。 それだけを置いて、ルーシェンはすぐさま海へと飛び込み、そして潜っていってしまった。 「ルーシェン!!」 声を荒げても、もうそこにルーシェンはいない。 「ルーシェン、必ず戻ってくる!妹にこれを届けて、元気になった妹と一緒にここに来るから!だから待っててくれ!」 愛してる─。 その叫びがルーシェンに届いていたかどうかは、終ぞ知ることはない。
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