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「こんな辺境の島じゃ…当時は貧しかったからの。人魚を金儲けに使おうと企んだ島の人間たちにさんざ嬲られて、遂に人魚は死んでしもうた。兄は怒り狂った。そして儂に言ったのじゃ。」
人魚に人間を近付けてはならない。協力してくれ、僕はこれから発狂したふりをする。便所も行かないから、世話をして欲しい。
そして僕が脚を失ったのも発狂したのも人魚のせいだということにして、僕が死んだ後も後世に伝えてくれ─。
おばば様の兄は暫く発狂したふりを続け、ゆっくりと時間をかけて回復したふりをし、そして正気にかえったふりをして人魚の恐ろしさを騙った。
おばば様の兄はその後流行り病にかかり短い生涯を閉じたという。
そして残された島の人間に、おばば様は騙った。兄から託された嘘を。
その甲斐あって、他所者は愚か島の人間でさえ人魚に近付かない今が出来上がった。
全ては、人魚を守るために。
「お願いじゃお若いの。人魚は弱い。欲に塗れた人間から、あの綺麗で優しい生き物を守りたいのじゃ…」
おばば様は、それきりそこに立ち尽くし、付いてこなくなった。
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