小話1

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いつも、大学でこの手の話をするときはわざとらしく主語を抜いたりひそひそ声で話していたはずの安藤が普通の調子でそんな事を言っていて思わず驚く。 「そうだ、番殿に『お見舞いのお花ありがとうございました。』って伝えておいてね。 快気祝いは一応送ったけど。」 「うん分かった。」 「じゃあ、今回の件はこれでおしまい。大学でもまたよろしくな。」 「こちらこそ。」 握手はしない。お互いのフェロモンの香りが移ってしまう事はもう知っている。 それが少し寂しくはあるが、最愛の人の匂い以外つけないという人生も悪くないと思っているのが自分のオメガとしての本能によるものなのかそれとも自分の感情によるものなのかは相変わらず分からなかった。
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