星をつかむ話

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◆ 番になってしばらくは穏やかに生活ができていたと記憶している。 けれど、蒼輝から意図せぬヒートになってしまったという連絡が来た。 番である自分以外をもし頼っていたら、そいつの事を殺してしまいたくなっていただろう。 けれど、その状況を引き起こしたのが別の番だということであれば話は別だ。 私怨に他のアルファを関わらせることに引っかかりが無いわけではなかった。 しかも蒼輝の友人だ。できれば関わりたくはない。 関わってしまえば人としての理性的な部分を超えて、アルファとしての嫉妬で他のすべてから蒼輝を隔離したくなってしまうことは明白だった。 けれどこれだけは別だ。 アルファには、アルファのルールがあるのだ。 それは相手も分かっている様だった。 安藤といっただろうか、蒼輝の友人であるアルファがため息をついた。 何度嗅いでもこのアルファの匂いは好きになれない。 「立ち合いも糞も、『他の番に手を出したバカ』として知れ渡ってるんだから充分社会的制裁を受けてるでしょうに……。」 けれど安藤は蒼輝の名前も存在も一言も言葉に出さなかった。 こいつはちゃんと分かっている。他のアルファに自分の番の事を語られるということがどういう意味かもきちんと分かっていて、それで口には出さないのだ。 「俺、帰っていいですか?」 心底面倒そうに安藤は言う。 友人じゃないのか? と聞く気にもなれない。アルファ同士なんていうものは基本的にはそんなものだ。 「いや、俺も帰る。」 何か、跡が残る様な事をして蒼輝の前に再びこいつらが現れてしまった時に、あれが気にしても困る。 土下座に近い体制で膝を折るアルファに回し蹴りを一発入れた。 正直これ以上別の事を考えたく無かったし、蒼輝の実家への説明もこれでつく。 「お優しいことで。」 うめき声をあげるアルファを見下ろしながら言う安藤は蒼輝の説明していた好青年の印象はまるでない。 だから、こいつは嫌いなのだ。 思わずため息をついてしまう。 「俺からは何の話もしませんので。」 まあ、俺の存在はウザいですが無視してください。 そう言って安藤は笑った。 無性に自分の番の顔が見たくなって、お言葉通りそのまま無視して家に直行させてもらった。 ◆ 「都竹さん、お帰りなさい。」 蒼輝に出迎えられて思わず抱きしめると、「急にどうしたんですか?」と聞かれる。 その表情が馬鹿のようなアルファ同士のあれこれを流し去ってくれた。 「いや、なんでもない。」 そう答えると蒼輝の髪を撫でた。 番は目を細めると幸せそうに笑った。 了 お題:都竹視点での想いや行動。安藤についてどう思っているのか。
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