プロローグ

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 あと数秒の命だとは知らず、のんきに寝息をたてている名前も知らない男の喉に、ナイフを突き刺す。空気の抜ける「ひゅっ」という音がして呼吸が止まる。ナイフが皮を破り、肉を引き裂いてベッドに突き刺さる感触を確認すると、少しナイフを引き抜いて一気に横に切り裂く。吹き出してきた鮮血が、私を真っ赤に染め上げる。そう、まるで石榴の果汁ように。  その時、命が尽きようとする人間だったものの横から声がした。 「きれいだ」
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