帝都クレタ

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 白髪の老婆はウン十年前、Aランクよりも更に上、Sランクパーティの魔法師であり、ギルド本部の現マスターであった。そのギルドマスターと同行して来たのが、緋色の騎士こと、アルムス帝国第三皇女であるフィアレーヌ・アルムスだ。 「ええと・・・色々と分からないんですけど?」  一度に大量の情報を与えられ、事態の収拾ができないシャルルは、テーブルを挟んで座る2人に顔を向ける。すると、その問いにフェアレーヌ皇女が応えた。 「ふむ。まず、そのコインだが、それを所持している者が、皇族と繋がりがあるという事を示す物だ。そして、そのコインに彫られている竜の紋章は、私の関係者だという事を表している。それで、ギルドから確認の連絡を受けた私が、面白半分に来た―――という訳だ」 「まあ、何らかの価値がある物なのだろうとは思っていましたが、少し驚きました。まあ、でも、それはどうでも良いんです。それより、どうして僕が勇者だと、それにパテトの本名まで知っているんですか?」  あの場所でシャルルは、自分の名前を一言も口にしなかった。それにも関わらず、なぜシャルルの身元が判明しているのか。そこが、一番の疑問点だったのだ。  その問いを受けたフェアレーヌ皇女は、淡々とした口調で説明を始める。 「実はあの時、ラスカの瞳が盗み出した物は、光の護符という皇家に伝わる宝物だったのだ。  光の護符というのは、魔王を封印した時、テレス様が勇者のために使わされたとされる法具だ。一体、どういう効果があり、何のために使用されるの分かっていない。ただし1つだけ、勇者が手にした時にだけ光輝く、という事は判明しているのだよ」  シャルルは「なるほど」と、口にして考え込む。  あの小箱を返却しようとして懐から出した時、確かに、隙間から光が溢れ出していた記憶がある。あの光が勇者である事の証明であるならば、判明していても不思議ではない。  徐々に現状の把握が進むシャルルに、フィアリーヌ皇女が言葉を重ねていく。 「ああ、パテト姫は覚えていないかも知れないが、今から3年前、ここクレタで開催された世界会議の時に会っているのだよ。だから、後で一国の王女が勇者パーティにいる事に驚いた。いや、だからこそ、パーティメンバーに潜り込んだのだがな」  シャルルが横を向くと、菓子を手にするパテトと目が合った。すると、パテトは頭を左右に振った。
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