カルタス防衛戦

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 偽勇者マックスは直ぐに見付かった。いつも通りの生活を続けているらしく、前回出会った飯屋で朝食の最中だった。シャルルはその席に近付くと、声を掛けた。 「ちょっと、いい?」  マックスは一瞬たじろいだが、3人の仲間をそのままに立ち上がった。そして、そのままシャルルの後に付いて行く。店を出て人気の無い路地に入ると、マックスから話し掛けてきた。 「何の用だよ。オレ達は別に悪い事なんかして、ない、ぞ・・・」  精一杯の虚勢は、尻すぼみになるセリフが台無しにした。 「いや、1つだけ、聞きたい事があったから」  穏やかな口調のシャルルに、再び偽物として糾弾されるものだと思っていたマックスの表情が緩む。しかし、それも次の言葉を耳にする迄だった。 「どうして、今夜のゾンビ討伐隊に参加しないの?」  当然、昨夜カルタスの外にゾンビが群れていた事は知っている。  今夜、ゾンビ討伐のために冒険者が集められた事も聞いている。  しかし、それにマックスは参加していない。街の人々を護ると言いながら、行動が伴っていない―――そう、問い詰められているのだと、マックスは受け止めた。  その問いに、マックスは正直な思いを吐露する。 「本当のレベルは13、ランクはEなんだ。参加しても足手まといになるだけだし、万一無様な姿でも晒そうものなら、勇者として街の人達に安寧を与えてきた事が帳消しになってしまう。だから、敢えて参加しなかったんだ。  別に、怖いとかそんなんじゃないんだ。街の人達には世話になったし、いつだって命懸けで闘うさ。でも、今回はCランクのパーティも参加するって言うし、オレ達はいらない」  負け犬の遠吠え、と言ってしまえばそれまでだが、確かにマックスの言っている事にも一理ある。そう、シャルルは思う。  マックスの言う通り、Cランクのパーティを含めた50人規模の討伐隊が、ゾンビごときに負けるはずがない。そもそも、その討伐隊にシャルル達も参加していないのだから、マックスを責める事などするつもりはない。  昼過ぎになると、今夜の決戦に備え、シア方面に作られている門に堅固な柵が設置され始めた。  どうやら、門を開け放って囮とし、そこにゾンビを集めて掃討するという作戦の様だ。危険度は高くなるが、敵を分散させる事なく一掃できるため効率的だと思われる。討伐隊は門の外で、ゾンビ達を迎え撃つ構えだ。
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