パテト・チャタルと牢獄の泉

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 カルタスを出発したシャルルは、パテトと共に駅馬車に乗っていた。向かっている場所は、帝都クレタだ。カルタスからクレタまでは駅馬車で5日の距離にあり、現在は3日目である。2日間野宿が続いたが、今夜は小さいながらも街に停車するらしい。 「たまには、美味しい肉とか、美味しい肉とか、美味しい肉が食べたい」  シャルルの横で口を尖らせるパテト。どうやら、干し肉には飽きているらしい。シャルルのアイテムボックスに肉は入ってはいたが、他の客も乗り合っているため取り出す訳にもいかない。アイテムボックスは、レアなスキルなのだ。知られると、色々と面倒事に巻き込まれてしまう。 「お嬢ちゃん。今日は街に泊まるから、肉が食べられるかも知れないよ」  同じ馬車に乗っていた旅慣れた中年男性に言われ、パテトの表情が一気に明るくなる。 「野菜も食べろよ」  追加されたシャルルの言葉を聞き流し、パテトは左右に揺れながら街に到着するまで鼻歌を歌っていた。  日暮れ前。ようやく馬車は、今日の終着点である田舎町に到着した。街の名前はエレタル。エレタルは小さいながらも皇帝直轄の街であり、施設は整っている。 「明日の朝9時に出発しますので、その時刻までに、ここに集合して下さい。遅れた場合は置いて行きますので、お気を付け下さい」  駅馬車の御者が宣言し、一旦乗客は解散となった。宿泊する宿は自分達で探さなければならない。これは、人それぞれ懐具合が違うため、仕方のない処置なのである。 「お肉、お肉、おにっくう」  食い意地が張っているパテトが、リズミカルな歩調で食事屋に向かって突き進む。余程待ち遠しかったのか、口から涎が垂れている。  一番高そうなお店の扉を開け、パテトが店内に突撃する。金を支払うのはシャルルであるが、お構いなしだ。無駄にに嗅覚が鋭いため、確実に一番美味しい店を選択する。そこに、価格の概念は存在しない。  30席程はあるお店だが中はほぼ満席で、偶然空いた席にシャルル達は座る事ができた。 「いらっしゃいませ」  店員の挨拶さえも耳に入らないパテトが、御品書を片手に注文を始める。 「肉料理一式。以上」 「以上じゃないだろ。野菜も食えって。それに、ご飯も」  ようやく出会えるはずの肉。しかし、その注文が受理される事はなかった。 「申し訳ございません・・・今日の肉料理は、先ほど売り切れました」
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