緋色の騎士

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 エレタルを出発したシャルル達は、ようやく帝都クレタが見える場所まで到達していた。  アルムス帝国の帝都であるクレタは、都市の周囲をグルリと防壁で取り囲んだ城塞都市だ。都市全てが強大な城の役割を果たしており、南には大河、北には絶壁の丘陵があり、天然の要塞となっている。最北に聳える王城は堅固で、その麓は通路が迷路の様に入り組んでいる。  人口は約5万人。世界有数の巨大都市でもある。そのため商人も多く、大河を利用した水上輸送も盛んであり、兵は強く民は富んでいると言われている。  シャルルの目に、クレタの防壁が見え始めた。そして、東西南北の位置に立つ高い塔が4棟在り、都市の中央には、更に高い塔が建っている。それにしても――― 「綺麗な街ですね。城壁に使用されている石は白色で統一され、門の前を流れる川がキラキラと太陽の光を反射して」  思わず口を開いた乗客に、別の乗客が同意する。 「そうですねえ。とても300年前に、壊滅したとは思えませんね、本当に」  乗客の会話を聞き流していたシャルルであったが、気になる内容を耳にしたため口を挟む。 「あの、300年前に壊滅したとは、一体どういう事なんですか?」  突然会話に割り込んだシャルルに嫌な顔一つ見せず、乗客が説明する。 「300年前に復活した魔王により、クレタは攻め滅ぼされたんですよ。王家や住民の手によって復興されましたが、それはもう悲惨な状態だったそうです」  そして、別の乗客が更に言葉を重ねる。 「その時に犠牲になった人々の魂を鎮魂するために、東西南北4つの塔と、中央の巨大な塔が建立されたそうです」  その言葉を聞き、シャルルは街に建つ合計5棟の建物を見た。  その時だった。塔を眺めるシャルルの目に、クレタ方面から飛翔して来る物体が写った。それは徐々に大きくなり、5匹が編隊を組んで飛ぶワイバーンだと判明する。山岳地帯で遭遇した盗賊を思い出したシャルルは、電撃の魔法を待機させる。もし、馬鹿にして通り過ぎようとした場合は、撃ち落としてしまおうと思っていた。  ワイバーンの背に、各々人間の姿が見える。そして、シャルル達の上空を下卑た言葉と共に、嘲笑しながら通過―――できなかった。晴天にも関わらず突如として雷鳴が轟き、5本の稲妻が的確にワイバーンを狙って降り注いだからだ。  稲光の雷鳴の後、ワイバーンは地上に落下していた。
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