緋色の騎士

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 この程度でAランクなのか?  そう思ったものの、自分には無関係だという事に気付き、シャルルは気にするのを止める。それと同時に、懐に仕舞い込んでいた小箱の事を思い出した。 「ああ、これ」  シャルルは懐に手を突っ込み、ラスカの瞳が盗んだであろう小箱を取り出した。その瞬間、それに異変が起きている事に気付いた。小箱の隙間から、金色の光が漏れ出してしたのだ。それを目にした緋色の騎士が、シャルルを見据えた。 「なるほど」  そう呟きながら、下馬した緋色の騎士は小箱を受け取る。シャルルが手を放すと同時に、その輝きは徐々に薄くなり、やがて消滅した。 「ところで、帝都に来た目的を教えてもらえないだろうか?」  小箱を懐に収め、緋色の騎士が訊ねる。特に隠す理由もないシャルルは、現在の予定をそのまま伝えた。 「ギルドへの本登録と、歴史の探究のために。・・・いや、違うな。魔王の調査をするためかな」  それを聞いた緋色の騎士は、「うむ」と頷いた。 「それでは、ギルドで本登録の手続きをした後、街の中央に建つ塔に向かうが良かろう。そこに行けば、得る物があると思う。そして、もしも危険を顧みないというのであれば、その後、西にある廃都を目指してみても面白いかも知れぬ」 「廃都?」 「それは―――」  口を挟もうとする騎士を制止し、緋色の騎士が懐から白金のメダルを取り出す。それをシャルルに手渡しながら、メダルの説明をする。 「廃都は危険度が高いため、Bランク以上の冒険者でなければ入場を許可していない。しかし、2つのAランクパーティを1人で撃破した力と、宝物を奪還してもらった謝礼を兼ねて特別に許可しよう。ギルドで廃都に向かう旨を伝え、そのメダルを見せれば、地図と許可証を受け取れるはずだ」  正直なところ、帝都にすら入っていない状況で説明されても全く要領を得ない。しかし、好意として差し出されたため、とりあえず、シャルルは白金のメダルを受け取った。  それを見届け、緋色の騎士は片手を上げて背を向けた。 「半数はラスカの瞳の捕縛。残りは冒険者の回復を」  直立不動で指示を聞いた騎士達は、それぞれの役割を果たすために行動を開始する。シャルルは駅馬車の元に引き返しながら、冒険者に向け密かにヒールの魔法を放った。 「ええと、それでは出発します」  状況が飲み込めないまま、御者が手綱を引いた。
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