襲撃者

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 ラナク海峡。  ユーグロード王国があるムーランド大陸と、アルムス帝国があるエストランド大陸を分断する海峡である。その潮流は凄まじく、1日に2回訪れる潮止まりを狙わなければ渡航できない。2キロメートルほどの海峡であるが、その間を約2時間で渡り切らなければ外海へと流され、二度と戻っては来れない。  そのため、ユーグロード王国とアルムス帝国の2大国は小競り合いのみで、大規模な戦闘を展開した事がない。その小競り合いさえも、停戦条約が締結されて以降、この10年以上は起きていない。  潮止まりを狙い、シャルル達が乗る帆船も出向した。  天候も穏やかで、順調に進めば1時間ほどで対岸に到着する。その港町の名はソマリ。そこからがアルムス帝国となる。そして、ソマリから陸路で2日の距離に目指すサリウがある。  全長が30メートル以上はある純白の帆船。シャルルはこれほどの船で航海するのは初めてで、いや、そもそも船に乗る事自体が初めての経験で、甲板から身を乗り出して熱心に海を眺めていた。傍から見ると、初めて都会に来た田舎者そのものだった。 「そんなに覗き込むと、海に落ちますわよ」  マリアに声を掛けられ、我に返ったシャルルがバツが悪そうに振り返る。穏やかな笑みを浮かべるマリアを目にし、内心で羞恥に悶えるシャルルは必死に話題を変えた。 「そ、そういえば、鑑定スキルですけど・・・」  鑑定スキルの名を出した途端、今度はマリアが耳まで真っ赤に染まる。先程の事が、まだ鮮明に思い出せるのだろう。それでも、シャルルの話しに相槌を打つ。 「名前と現在の職業、レベル、それと体力、力、魔力、防御力、スキル名―――」 「そう、ステータスボードに明記されている事が、覗き見れるというスキルですわ。ただ、相手のレベルが自分より高い場合や、高度な隠蔽魔法が使われていると見えない事がありますわ」 「あと・・・」 「あと、何ですの?」  シャルルがその先を続けようとすると、マリアが怪訝な表情をした。 「あとは、適性?潜在能力かな?剣、弓、格闘技、魔法、特殊スキル・・・その人の潜在能力が、ランク付けされて見えるみたいですね」 「それ、知らないんですけど・・・・・」 「え?」  マリアからジト目を注がれ、言葉に詰まる。このステータス2とも言える情報は、もしかするとシャルルだけにしか見えないのかも知れない。
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