襲撃者

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 マリアはソマリに到着すると、すぐに輸送用の馬車を用意する。  魔石が詰め込まれた木箱はかなりの重量になるため、1台に2箱までしか積めない。そのため、魔石用の馬車3台とその他諸々を乗せる馬車が2台、それと、マリアが乗る馬車の6台編成になった。一般的な商人が2台か3台で編成する事を考えれば、かなり大所帯である。それはつまり、盗賊に襲撃される可能性が高くなるというを意味する。 「シャルル様、申し訳ございませんけど、すぐに出発致しますわ。ここで時間をかけてしまいますと、盗賊達に私達の情報が流れてしまうかも知れません」  シャルルが首を傾げる。 「ええ、構いませんけど。そんなに早く、我々の情報が流れるとは思いませんけど」 「いえ」  そう言って、マリアが左右に首を振る。 「おそらく、盗賊は既に情報を握っていると思います。シャルル様がいらっしゃるので大丈夫だとは思いますが、念には念を、ですわ」  船から馬車へと荷物を積み直す作業を急ぐ中、コソコソと路地裏に消えていく人影。 「盗賊―――ね」  あの服装は、マリアが雇っている従業員のものだ。従業員の中に相手の手下が紛れ込んでいるのであれば、情報は筒抜けだ。この事にマリアが気付いていないはずがない。 「鬼が出るか、蛇が出るか、何が現れてもマリアは僕が護ろう」  船が到着して2時間ほどで、出発の準備が整った。荷物の量と荷馬車の台数を考えれば、尋常な速さではない。これは、マリアの采配によるところが大きい。軍師適性Sはダテではない。 「では、出発致しましょう」  馬車に乗り込んだマリアがそう告げると、ダリルが深く一礼して右手を高々と伸ばす。 「出発!!」  馬の嘶きと男達の声が響き渡り、先頭の馬車が動き始めた。  ソマリからサリウまでは、荷馬車帯同であれば2日程度。国防においても、この地を治めるクルサード辺境伯にとってもソマリとサリウを結ぶ道は重要であり、他の道と比較して十分に整備されている。道程の中間地点には小さいながらも宿場町が作られ、お金さえ払えば野宿する必要がない。しかも、10日に1度、辺境伯の兵が巡回し、魔物や盗賊の討伐も行っている。通常であれば、それほど危険がない移動である。  シャルルは外で警戒をしようとしていたが馬車に引きずり込まれ、マリアの隣に座っている。索敵能力等があれば便利なのだが、そんな魔法もスキルシャルルにはない。
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