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出発はバタバタとしたものの、その後は順調そのものだった。
道は剥きだしの土ではあるが、通行人が多いため踏み固められて平坦になっている。それに、見晴らしの良い草原地帯に道が通っていて、魔物に遭遇する事もほとんどない。上位の魔物になるほど警戒心が強ため、こんな場所には現れる事はない。
今のところ、危惧していた盗賊の類も見当たらない。
「出発が遅れましたが、道中急いだ事もあり、日暮時には中間地点の宿場町に到着するものと思われます」
「予定通り、といったところですわね」
小休止の合間に、ダリルがマリアに報告する。荷馬車のためスピードは出ないものの、全員が荷台に乗り込んでいるため、通常よりも進行速度が速い。
「では、出発します」
馬に跨った若い男性が、マリアに声を掛けて合図を送る。それを受けた4人の冒険者達が、急いで荷馬車の周囲に散っていく。護衛として雇っていたBランクパーティ赤狼が全滅したため、新たにソマリでCランクパーティと護衛の契約を交わしたのだ。いくらシャルルが強いといっても、さすがに人手が足りないだろうと判断した。
そして、マリアは確信していた。必ず襲撃される―――と。
再び動き始めた馬車の中で、シャルルがマリアに問い掛ける。
「マリアさんは、ある程度予測しているんですよね?」
「もちろんですわ」
「その対処方法もですか?」
「まあ、あるにはありますけど・・・」
マリアが口ごもる。相当確率が低いのか、とんでもない内容なのだろう。マリアは隣に座るシャルルに向き直り、今後の予想を語り始めた。
「宿場町までの間で襲撃される事は、まずありません。もし、ここで荷物を奪ったとしても、こう見晴らしが良くては、誰かに見られてしまいますから。襲撃者が欲しい物は魔石です。魔石を奪うために、一番効率が良い方法を採ってくるはずです」
「それは?」
マリアが右手の人差指を立て、その指を前後に揺らす。
「私が相手であれば、まず、私とダリルを荷物から引き離します。ダリルはそこそこ名の売れた存在です。可能な限り、戦いたくはないと思いますので。そして、新たに雇った護衛の冒険者達に睡眠薬を飲ませて、どこかに監禁するでしょう。そして、その隙に荷物をすり替え、闇に紛れて逃亡する―――恐らくく、こんなところですわ」
「それなら、こうしましょう」
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