襲撃者

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 日暮前、マリアの予定通り、荷馬車隊は中間地点の宿場町に到着した。  交易の中継点として栄えるこの宿場町には、様々なランクの宿があり、十分な客室があるため満室などという事はない。馬車を降りたマリアは、今夜の宿を決めるために大通りを西へ向かって歩き始めた。  その直後――― 「マリア様ではございませんか?」  突然声を掛けられ、声の主を確認するために振り返った。そこにいたのは、サリウで面識のある商人だった。 「あら、お久しぶりですわね。ご機嫌いかがですか?」  マリアが笑みを浮かべ、商人に挨拶する。正直、本当に面識がある程度で、それほど親しい間柄ではない。会釈をして通り過ぎようとしたものの、商談を持ち掛けられた。 「良い儲け話があるのですが、乗りませんか? ああ、宿は金鯱亭が一番です。専用の倉庫も持っていますし、荷物の警護も無料でしてくれますよ。すぐ目の前、ここですから。どうぞ、先に部屋を確保してきて下さい。私はここで待っていますから」  商人に促され、マリアは金鯱亭に宿泊する事にした。そこそこランクが高い宿であればどこでも良かったため、勧められるがまま決めた。実際、倉庫があるのはありがたい。  マリアは部屋を決めると、ダリルを伴って商人と会食に出掛けた。  一方、Cランクパーティは宿が管理する倉庫の前にいた。他の客の荷物もあるため、自由に出入りできない。万一盗難被害でも出ようものなら、信用問題だからだ。  結局、何もする事がないため、Cランクパーティは5人のメンバー全員で食事に出掛けた。  メイン通りに立ち並ぶ飲食店はどこも商人目当てで、Cランクには少し高めの値段設定になっている。しかし、1本通りを中に入れば、値段設定が下がり客層が変わる。まだ報酬を受け取っていない彼等は、当然こちらの居酒屋だ。  軽く食事をとり、多少腹が膨れてきた頃、突然、パーティが座るテーブルに5杯の酒が届いた。 「おい、誰か頼んだか?仕事中だから、酒類は止めておけと言っただろ」  リーダー格の男が自分以外の面々を見渡していると、不意に背後から声がした。 「同じ冒険者同士、色々と情報交換しませんか?」  そこには、娼婦風の女性が5人並んで立っていた。Cランクメンバーの面々は、互いの顔を見合わせ、緩んだ笑みを浮かべる。 「少しなら」  その後、1時間も経たない内に酒に入れられた睡眠薬で朝まで熟眠した。
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