襲撃者

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 その頃、金鯱亭により厳重に管理されているはずの倉庫。そこに10名以上の男達が蠢いていた。警備していた者達は周囲を警戒し、内部の男達に協力している。最初から示し合わせていたのだろう。 「よし、荷物を確認し、こちらの荷台とすり替えるのだ。急げ!!」 「「「はっ」」」  全身黒ずくめの男達。リーダー格と思しき者が、テキパキと指示を下す。その動き盗賊などではなく、訓練された軍隊の様だ。男達は一斉に各荷台に散り、中身を確認し始めた。  普通であれば、これで万事上手く事が運べたに違いない。しかし、その一連の行動を見詰めていた人物がいた。一つの影がフワリと倉庫の天井から飛び降りると、リーダー格の男に近付いて行く。 「まさか、マリアさんの言った通りになるなんて」  シャルルは呆れた口調で呟き、腰に下げている銅の剣を抜く。  マリアが襲撃の予想をした後、シャルルは別行動をとっていた。盗賊を一網打尽にするため、先行して宿場町に行き、潜伏して時を待っていたのだ。 「誰だ!!」  気配に気付いたリーダー格の男が叫ぶ。その声に、荷台に散っていた他の男達が集まって来る。シャルルの姿を確認し、躊躇なく抜刀した。 「誰だって訊きたいのは、こっちの方なんですけど。僕の依頼主の荷物を、どうしようとしているんですか?」  その言葉を耳にした途端、リーダー格の男が即座に指示を飛ばした。 「殺れ!!」  一斉に襲い掛かる男達。しかし、5人の剣劇を受け止めたシャルルに吹き飛ばされる。その光景を目の当たりにした他の者達が、驚愕して狼狽える。 「こいつ、強いぞ!!」 「バラバラに戦わず、隊列を整えるんだ!!」 「「「おおう!!」」」  掛け声とともに三列に別れ、盾を持った者を前衛にて迫って来た。  いやいや、それだと盗賊ではなく、どこかの軍隊だバレバレなんだけど・・・  呆れるシャルルに、隊列を整えた男達が襲い掛かる。しかし、所詮は多対多の布陣であり、一対多に適した対応はできない。シャルルは素早く横に移動すると、側面から攻撃する。戦場ではあるまいし、正面から戦う必要がない。  側面を突かれて呆気なく崩壊する陣形。再び乱戦に突入する。1人、2人と倉庫の壁に穴が開いていき、倉庫内で動いている人数が減っていく。 「化け物か」  リーダー格の男がそう呟くまで、30分もかからなかった。
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