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上段に構えていた鋼の剣を、叩き付ける様に振り下ろす。しかし、渾身の一撃は、シャルルの持つ銅の剣によって、簡単に振り払われた。その勢いで、男は倉庫の床に転がる。
「バ、バカな。この俺がこんなに簡単に負けるはずが・・・」
そう呟く男の鼻先に、銅の剣が突き付けられる。
「まだやりますか?僕は別に構いませんけど」
10人以上の男達を打ちのめしたにも関わらず、息一つ乱していないシャルルを見て、リーダー格の男は剣を手放した。
「いったい、お前は何者だ。俺を、この人数をものともしないとは」
「え?ただの護衛ですけど。金貨3枚で雇われた」
男は唖然とした表情を見せた後、ガックリと肩を落とした。
それから暫くすると、マリアとダリルが倉庫に姿を現した。当初から予測できていた事もあり、驚いた様子もない。
「さすがシャルル様ですわ。この人数をいとも容易く退けるとは」
「左様でございますな。しかも無傷とは、いやはや驚きです」
感嘆の声を上げるマリアの後ろで、ダリルが深々と頭を下げる。
「まあ、最初から分かっていたので、そんなに大変ではなかったですよ」
歩み寄ったマリアの視線が、縛り上げられて床に座る男に向けられる。その瞬間、その瞳が大きく揺れた。
「そうでなければ良いと思っていましたが・・・もう、ダメですわね」
その言葉を耳にした男が、肩と視線を同時に落とした。
「この者達は、盗賊として宿場町の衛兵に引き渡します。あと、盗賊と結託していた金鯱亭にも、それ相応の罰を与える様に致しますわ」
そう周囲に告げると、マリアはその場を後にした。
翌朝、酒場で熟睡したままだったCランクパーティを起こし、辺境伯領の都であるサリウに向けて出発した。順調に進めば、夕刻にはサリウに到着するはずだ。
「シャルル様はサリウに到着したら、何かされる予定ですか?」
隣に座るマリアに問われ、シャルルは思案する。急ぐ旅ではないし、特に予定もない。
「特に決まってはいませんけど、ステータスボードの登録くらいですね。失くしてしまって・・・あ、でも、無理かも知れません。身分を証明するものが全く無いので。でも、ギルドに登録する時には必要なんですよね。困ったな・・・」
「そうですか」
シャルルの話しを聞き、マリアが答えた。
「では、ステータスボード登録の際に保証人になりますわ」
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