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ステータスボードも所詮は国の管理下にある機関が管理しているものだ。本人の存在が怪しかろうが、重要人物の保証があれば、いくらでも新規に発行する。しかし、保証人になるとういう事は、万一の場合にはその人物の後始末をしなければならない。つまり、それだけの覚悟がなければ、保証人を引き受けたりはしない。
「いや、そこまでしてもらう訳にはいかないので」
「そう・・・ですか」
シャルルに断られて顔を伏せるマリア。その隣で、無表情のまま外を見詰めるシャルル。
確かに、願ってもない申し出だ。しかし、それだけに安易に受ける訳にはいかない。僕とマリアはあくまでもビジネスパートナーだ。今こうして護衛しているのも、金貨3枚という契約があればこそだ。別に、マリアが疑わしい人物だと思っている訳ではない。むしろ、信用に値する人物だと思っている。しかし、それは、あくまでも仕事上の話しであり、私的な感情ではない。
僕は、あれでもパーティの皆を信頼していた。荷物を持たされたり、不条理に殴られたりもしたけど、それでも、僕に危険が迫れば助けてくれたし、追い付くまで待っていてくれたりもした。だから、僕は信じていた。本当の仲間だと、僕をその一員として大切にしてくれていると。僕は全幅の信頼を預けていたんだ。何も疑わず、何も見ず、何も考えず、気付かないフリをして。
あの時まで―――――!!
でも、僕はカギでしかなかった。扉を開けるカギでしかなかった。
そう、僕はエサでしかなかった。逃げる為のエサでしかなかった。
だから、今の僕は誰も信じられない。
笑顔で差し伸べられる手を、握る事ができない。
善意の言葉だと頭では理解しても、心が拒否する。
僕は、誰も心から信じる事ができない。
気まずい空気が流れる中、馬車を照らす太陽は徐々に傾いていく。もうサリウは近い。
やがて、馬車のそとから、護衛の冒険者の声が聞こえた。
「サリウの城が見えて来ました。あと数十分で到着します」
サリウは高い塀に囲まれた城下町だ。この地が、ユーグロード王国に対する最前線である事もあるが、それ以外にも理由がある。サリウがダンジョンを管理をしている都市でもあるからだ。
通常、近隣にダンジョンがあるからといって特に問題はない。しかし、稀にダンジョンが溢れる事がある。その際、真っ先に襲われるのがサリウなのだ。
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