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「それにしても、シャルル殿は異常に強いのう」
ベージュ色の絨毯が敷き詰められた応接室に通されたシャルルは、大理石で作られたテーブルを間にして、クルサード辺境伯と向かい合う位置に座っている。先程とは違い抜刀していないが、抜き身の真剣と対峙している様な威圧感を覚える。さずが歴戦の猛者、といったところだろうか。
「いえ、まだまだ未熟ですので」
「そんなに謙遜するものではないぞ。されに、それだとワシが弱いという事になるではないか」
返答に困るシャルルを助ける様に、金貨3枚をトレーに乗せたメイドを伴ったマリアが現れた。
「お待たせ致しました。これが契約の成功報酬ですわ」
トレーに乗せられている金貨を受け取ると、シャルルはそれをポケット越しにアイテムボックスに入れる。
「金貨3枚など、命の恩人に対して少ないのではないのか?」
「いえ、そんなに大した事はしていませんし、そういう契約ですから」
普通の者であれば辺境伯の言葉に飛び付くところだが、度を越した金銭をシャルルは必要としていない。
「それはそうと、お父様に大事なお話しがあります」
「な、何だ?け、結婚は認めんぞ!!あと3年、いや2年待て!!」
激しく動揺する父親を、マリアが冷めた目で制する。
「相手がおりませんので・・・それに、お父様を見たら、みんな逃げてしまいますわ」
「お、おお、そうか・・・では何だ?」
ホッと胸を撫で下ろす辺境伯。しかし、マリアの話しが、それ以上の衝撃を与える。
「魔石はやはり、我が国からムーランド大陸に向け、大量に密輸されていまいた。相手は恐らく、ユーグロード王国でしょう。今回、取り返した魔石は全てCランク以上、木箱にして5箱分ですわ」
「その量から考えると、我が国全域から流れていると考えて間違いないだろう」
「それだけ、闇ギルドの力が強くなっているのだと思います。
それと、大変残念ではありますが、中間地点で捕えた盗賊の中に、ザンギス様の配下の者がいました」
「なんと、ザンギスが!!」
反射的に辺境伯が勢い良く体を起こし、テーブルとともにカップが揺れる。
「ザンギス・・・」
「証人として、ザンギス様の兵士長を捕えてありますので」
「う、うむ」
辺境伯は扉の横に立っていたダリルに声を掛ける。
「至急、ザンギスを呼べ」
「かしこまりました」
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