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一度退室したダリルが、直ぐに戻ってきた。
「ザンギス様は、城内のどこにもいらっしゃいません。マリア様が戻られたドサクサに紛れ、城外に出られたものと思われます」
「なんと!!それでは、黒幕は自分だと言っている様なものではないか」
「いかが致しましょうか」
ダリルの報告に、クルサード辺境伯が表情を歪める。それを見ていたシャルルが訊ねる。
「その、ザンギス様というのは?」
「ザンギスは、この地にあるダンジョンの管理を任している代官ですわ」
シャルルの問いに、隣に座っているマリアが答える。
「このクルサード領には、帝国の管理下にあるダンジョンが存在します。ご存知の通り、ダンジョンは魔物が発生すると同時に、様々な恩恵を与えてくれます。魔物の討伐による魔石の取得、それに、珍しい鉱石の発掘などです。
通常、ダンジョンは巨大化する前に攻略してしまうのですが、それでは安定的な資源の回収ができません。そこで帝国では、ダンジョンを暴走しない様に管理する事により、資源の安定供給を図っているのですわ」
「なるほど。それで、そのザンギス様という方が、そのダンジョンの代官だと」
シャルルの確認に、まりあが首肯する。つまり、ダンジョンの管理者が、闇ギルドの手先である商社と結託し、魔石を横流ししていたという事だ。
だとしても―――疑問が残る。あれほど大量の魔石が集まっていたという事は、この地からもかなりの量が持ち出されていた事になる。そうだとすれば、さすがに他の者が気付くのではにだろうか?もしかして・・・
シャルルの思考を遮る様に、マリアが話し掛けてくる。
「ところでシャルル様。お急ぎの旅ではないのでしょう?もしよろしければ、今夜は当家にお泊まりになられてはいかがですか?部屋はいくらでも空いていますし、美味しいお食事もご用意致しますわ」
刺す様な辺境伯の視線に耐えながら、どうしたものかと思案する。
どちらにしても、今日はサリウに宿泊する事になる。ステータスボードを持てない身では、ギルドに登録する事もできない。
「はい、よろしくお願いします」
シャルルに返事にパアッと表情を明るくするマリア。それを見ていた辺境伯は、小刻みに手を震わせながら引きつった笑顔で告げる。
「ああ、今すぐ帰・・・ゆっくりしていくと良い。食事はブタのエ・・・直ぐにでも用意させよう」
「ハハハ・・・」
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