サリウの動乱

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「ところで、お伺いしたのですが」  壁に掛けられている額縁に視線をやったシャルルが訊ねる。 「ここに掛けられている石板は一体何ですか?」  皆の視線の先には、巨大な額縁に入れられた状態で飾ってある石板があった。それは本当に巨大なもので、縦3メートル、横も2メート余りあった。それを無理矢理額に入れ、壁に掛けてある。 「ああ、これか」  その問いに答えたのはクルサード辺境伯だった。 「これはな、この城を建設した時に発掘されたものを、記念として飾ってあるのだ」 「と、申しますと?」 「この地には元々、古の神殿があったそうなのだ。それが過去の幾つかの戦により崩壊。そして約150年前、我が祖先が皇帝よりこの地を任された時、神殿跡にこの城を造ったのだ。その時に、瓦礫の中から発見された。しかし・・・」  辺境伯が石板を見上げ、大きく溜め息を吐く。 「この通り、古の文字で書かれているため、何が書いてあるのか読めぬ。帝都の学者にも問うたが、誰にも解読できなかった。古の神殿に保管されていたものだ。一体何が書いてあるのか、知りたいとは思っているのだがな」  確かに、何が書いてあるのか興味がある。 「近くで見させてて頂いても良いですか?」  シャルルは立ち上がると、巨大な石板に歩み寄る。そして、石板を見上げながら無詠唱で呪文を唱えた。「アナライズ」と。 「・・・地に魔王在り。天は堕ち、神の祝福は途絶え・・・全てが、暗黒の業火に焼き尽くされる・・・」 「これが読めるのか!!」 「お父様」  立ち上がった辺境伯を、シャルルが制止する。 「天が叫び、森が燃え上がり、あらゆるものが消滅する。  甦りし者達が大地を埋め尽くし、腐臭に埋没し、生ける者無し。  彼方から轟く咆哮。割れる海、深紅に染まる空。  灼熱の息吹と、氷結する突風に、動く者無し。  真っ赤に染まった目は、反逆と動乱を。  姿ある者は無く、姿無き者は闇に沈む。  ここに在る事が罪ならば、願わくば即座に終焉の時を―――」  読み終えたシャルルが、ふうっと深く息を吐く。  これは、過去に起きた出来事を後世に残そうとした記録だ。つまり、魔王と戦った古の人達が、実際に見聞きした事を石板に刻んだものだ。 「これは、いつ頃のものなのですか?」  振り向いたシャルルが、辺境伯に訊ねる。 「1000年以上前のもの、そう言われておる」
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