サリウの動乱

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 1000年、そんなに?  シャルルはアナライズの魔法で、再び石板を解析する。すると、その結果もやはり1200年前と出た。この石板は、過去に起きた魔王との戦いを記録したものに違いない。 「この石板が読めるとは、本当に驚いたぞ。それで、結局、何が書かれているのだ?」  クルサード辺境伯の問いに、シャルルではなくマリアが答える。 「お父様、何も聞いてらっしゃらなかったのですか?この石板には1000年以上前の、魔王と人間の激しい戦いが記録されていたのですわ。まあ、ただ、いくつか疑問が残りますけど・・・」 「う、うむ、そうなのか。うむ、そうだな。魔王との戦いが記録されていた。おうおう、激しい戦いが、古より繰り返されていたのだな。うんうん」  分かっているのかいないのか、そんな辺境伯を横目に、シャルルもマリアと同じ事を考えていた。確かに、疑問が残る。ただ、その点を疑問と捉えるならば、今信じられている全ての伝承を覆さなければならない。いや、書き換えなければならない。 「クルサード辺境伯様、少しお訊ねしたいのですが、この様な古の文字で書かれた石板などは、他にも存在しているのでしょうか?」  突然の問いにも関わらず、辺境伯が鷹揚に頷く。 「うむ、あるな。古の遺跡から発掘されたものもあるが、エルフやドラゴンなどの長寿種が所持している事もあると聞く。まだ発見されていないものもあるだろうし、帝都の博物館にもいくつか貯蔵されているようだ」 「ありがとうございます」  今までとは違い、頭を下げるシャルルの表情が明るくなる。以前と同じとまではいかないものの、少しだけ生気が戻っている。  伝承の発掘か。これは面白そうだ。しかも、ギルドに登録しなくても、勝手に探す事ができる。  うん、これだ。当面は伝承を探して旅をしよう。 「何となく、何を考えているのか分かりますけど、誰かの後ろ盾がございませんと、入れない場所が多いと思いますわ。そもそも、ギルドに入らなければ発掘はできません。勝手にやると盗掘になりますわ。それに、そもそも、ステータスボードが無ければ、ギルドに登録する事もできませんわよ」  マリアの言葉にシャルルは少し考える。だが、とりあえず全て先送りにする。自分のために、誰かを利用するなどしたくない。
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