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サリウより騎兵のみで出陣するマリア。ダンジョン砦までの距離は約3キロ、馬ならば10分程で到着する。シャルルは騎兵隊の最後尾を、ダンジョン砦に向かって走った。
夜明けが訪れる。遠方の山裾から朝日が差し込み、徐々に周囲が明るくなっていく。その中を全力で駆けてきたマリアは、ダンジョン砦へと到着する。周囲に魔物の姿は見えず、まだ暴走していない事に一先ず安堵した。
「砦内の人達をここに集めて下さい。私達が護衛するので、サリウまで撤退します」
「そ、それでは、この砦は・・・」
「一旦、放棄します」
到着後すぐに、砦の兵士長に指示を出す。しかし、それと同時に魔物の咆哮が轟いた。しかも、1つ2つではない。咆哮が重なり、まるで雷の様に天を揺さぶった。
それを耳にしたマリアは、ゆっくりと瞑目する。
「籠城に切り替えます」
ダンジョンが溢れたのなら、もはや手遅れだ。仮に、マリアだけが逃げるのならば、魔物を振り切る事もできるだろう。しかし、馬に乗れない民はどうなるのか。馬車もない、そもそも馬が足りない。ここには、300人を超える一般の人達と冒険者がいるのだ。マリアに残された道は、籠城して徹底抗戦するのみ。
砦といっても、城塞都市サリウに近いため、高さ2メートルほどの板でできた塀しかない。あくまでも、簡易の砦なのだ。魔物が大挙して押し寄せれば、とても持ち堪えられない。それでも―――
「兵士、それと、戦える人は前に。まずは、魔術師による魔法攻撃、そして弓等での遠距離攻撃を仕掛けます。合図をするので、それまで待機して下さい」
塀に備え付けられた櫓に上り、暴走したダンジョンの方角を見詰める。
ダンジョンから溢れだした魔物の数3000体。その全てがダンジョン砦を目指す。魔物にとって、その他の生き物は攻撃の対象でしかない。食料であり、遊戯の相手であり、繁殖の道具だ。それが一か所に集まっていれば、当然そちらに進む。
3000体の魔物に襲撃されれば、砦ごときが蹂躙されるまで大した時間は必要ないだろう。
しかし、1つだけ幸運があった。それは、この隠しダンジョンが、まだ発生して間もない事だ。いくら暴走したとしても、そのダンジョンのレベルより高い魔物は生まれない。つまり、大半がFかEランク。いたとしても、せいぜいDランクの魔物だ。とはいえ、この兵力では太刀打ちできない。
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