うっかりボーイズラブ

10/10

500人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 過去最大の大ピンチ!  イケメンが着崩した制服を乱暴に脱ぎ捨てていく。  そして(あらわ)になった素肌に目を見開く俺。  えーと、何この暴力的なまでの筋肉……。努力とか鍛錬とか最も縁遠い顔して何でそんなにバッキバキなの?  君の先祖はゴリラ? それとも筋肉増強剤でも使っているのかい? 「そんなに怯えなくていいよ。……できるだけ優しくするから」  それ、俺が彼女(未定)に言いたかったセリフ! 「てか、何で脱がないの? 俺に脱がせて欲しいの?」 アホかー! 脱ぎたくないからに決まってんだろ! 「……さっきからちょっとお腹痛いんで病院行ってきますね! それじゃ!」 「待て。それなら家が薬屋やってるからウチに来るか?」 「いや、かかりつけのトコでお薬貰うから大丈夫です」 「遠慮するな。家には色々揃ってるし俺がみてやるよ」 「いえいえ、漢方薬しか飲めないんでかかりつけじゃないとダメなんすよ」 「奇遇だな。俺のじいさんは東洋医学の第一人者だから漢方薬も揃っているよ。まぁ、とりあえず脱げ」  ヒィィィ! 引きちぎらないで俺の服! 一個一個ボタンつけるの大変だから! 「……アンタ、色白で綺麗な肌してるんだな。すっげー興奮する……」  落ち着けイケメン! 俺みたいなモヤシはごまんといるよ!  覆いかぶさってくるイケメン。威圧感漂(いあつかんただよ)う胸筋。  あぁ、俺の“初めて“をこんな筋肉野郎に奪われてしまうのか。  非モテのオトンですら初体験は一応女のオカンだったのに。……神さま、俺になんの怨みがあるんです?  思わずシクシク泣いてしまったら、イケメンが正気を取り戻したらしく『ごめん、怖がらせたかな?』と謝ってきた。 「そういえば自己紹介まだだったな。俺の名前は穂波(ほなみ)悠希(ゆき)。アンタは?」 「……川西(かわにし)和哉(かずや)です」 「カズヤか、いい名前だね。俺は女みたい名前だからあんまり好きじゃないけど……特別にユキって呼んでもいいぜ」  ニコッと優しく笑うイケメンもといユキ。  色々疲れた俺は、名前だけでも女の子ならもういいやって思っちゃって。 “ユキちゃん”に抱き締められるのを目を閉じて静かに受け入れた。                  *end*
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

500人が本棚に入れています
本棚に追加