おまけ編

3/4

500人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 俺は叫んだ。  叫んで叫んで1回深呼吸してから渾身(こんしん)の頭突きをユキちゃんにくらわせて逃げた。  俺は昔から頭が硬い。物理的な意味で硬いから“石頭のカズヤ”と近所で名を馳せるほど頭突きに自信があった。  これでユキちゃんもしばらく動けないだろう。  サヨナラ、初カレシ。明日から引きこもり王に俺はなるッ! 「テメェ……ブチ犯す!」  ヒィィイ……ユキちゃん不死身! てか、そこは普通に“ブッ殺す”でお願いします!  迫り来る半裸のユキちゃん。死ぬ気で逃げる俺。  頭突きした時に見えたユキちゃんの背中には虎と龍がおりました。  彼がただのヤンキーではないと知った今、もう生きるか死ぬかをガチで体験してます。  校舎をめちゃくちゃに駆け抜けザコヤンキーを突き飛ばし校門を出て住宅街を大爆走! 『待てコラクソガキ』『蹴っ飛ばした奴誰や?』『奥歯ガタガタいわせたる!』  ユキちゃん以外のヤンキーにも追われるハメになり、再び大ピンチ!  ワーワー言うてる間にどんどんヤンキーが増えていってなぜか抗争まで始めちゃって。 『ワレコラワレ』と河内弁だが大和弁だが区別つかなくなるほどみんな巻き舌で威嚇し合ってて。  その中の一人がオペラ歌手かな? と思わせる声量で、 『ワレいちびっとったら手足みなワヤクチャにいわして畝傍山にほかすぞコラ』 (意訳:そこのあなた。そんな風にふざけている場合じゃないですよ。私は君を痛めつけて奈良の山中に埋めてしまいますよ)と叫び更に過激化する抗争。  もう俺関係なくない? と安心していたら『また会ったな』と肩をグワシッと掴まれた俺。  今朝の電柱頭がニヤリと笑った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

500人が本棚に入れています
本棚に追加