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長身の男が一人でヤンキー共をぶっ飛ばしている。
グリップの効いた床に飛び散る赤い汁。
笑っていた女子も『えっ? ヤバッ』と怯え出した。
全員叩きのめすと男が顔を上げて俺に近付く。
あ、イケメンだ。それもかなりの美形。
怖がっていたはずの女子が『めっちゃカッコイイ!』とざわめき出した。
ついさっきまで酒焼けしたチーママみたいな声だったくせに、イケメン登場でワントーン上げて喜んでいる。
「アンタ、大丈夫?」
群がる女子に目もくれず手を差し出すイケメン。
もし俺が女の子ならここで甘酸っぱい恋が始まっていたかもしれない。
しかし男なので感謝の気持ちと同時に虚しさみたいなものが込み上げてきて、手を取らず自力で起き上がった。
「…助けてもらってありがとうございます。すいません、大丈夫っす」
「……今のうちに盗られた物取り返しときなよ」
「あ、ハイ。200円くらいなんで財布と服さえ戻れば充分っす」
ペコリと頭を下げて制服に腕を通している間もイケメンは俺をずっと見ている。
えーと。これはあれかな? お礼するまで立ち去ったらダメな感じ?
気まずい空気に耐えきれず『あの、良かったらジュースでも飲みますか?』と持ち掛けると『200円しか持ってない奴が無理すんな』と笑われた。
「お礼とか気にしなくていいから。それよりちょっと付き合ってくれない?」
軽い感じで言うもんだから、何かお手伝いでも頼まれるのかな? と思い『いいっすよ! 俺なんかで良ければ』と答えてしまった。
それが全ての間違いだった。
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