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「どこかお店でも入ろうか。君、ご飯は食べた?」 「まだよ」 「奇遇だねぇ、俺もなんだ。一緒に食事でもどうかな?」 「……まぁ、良いわ。そうしましょう」  若干嵌められた感は否めないが、そうするのが一番手っ取り早い。夕飯を食べたら取材ノートを見てもらうことになった。  通りを少し歩くと、あまり目立たないが温かい雰囲気の店に案内された。シンプルな木の看板が軒先から下がっている。店の中も木を基調としており、アットホームな雰囲気だった。二人は一番奥の窓際の席に座った。  アイヴィーは店のおかみさんを呼び、鶏肉の料理を注文した。シャノンはおかみさんにおすすめを聞き、その料理を注文した。  料理が届くといい香りが鼻腔に広がる。一口食べると口の中でほろりと崩れた。つい笑みがこぼれる。 「ここのお店美味しいわね。行きつけなの?」 「うん、去年もよく来てたんだ。やっぱり美味しいなー」  彼も笑顔である。伏せられた、まつげの長い目元をシャノンはぼーっと眺めた。それに気付いたアイヴィーが訝しげな顔をしたので、何でもないわと言って慌てて目を料理へと落とした。手を動かして料理を口へ運ぶ。あっという間に食べ終えてしまった。  食事後の皿を下げてもらうと、シャノンは取材ノートを広げた。 「指摘してもらった部分は直したわ」 「あ、本当だね、ちゃんと直ってる。これ調べるの大変だったんじゃない?」 「そうね、町の資料館でようやく見つけたわ。なぜあなたはこの情報を知っていたの?」 「まぁ色々事情があってね。あぁ、他にはここも気になるかな。詳しい資料を調べてみると良いよ」 「やっぱり教えてくれないのね……。まぁまた調べてみるわ」  シャノンが少し寂しげな顔をすると、アイヴィーは苦笑いをした。 「そのうち……ね。――あのさ、君にお願いがあるんだけど」 「何?」 「君のおばあさんの話を聞かせて欲しいんだ。……良いかな」 「別に良いわよ。なぜ?」  アイヴィーは一瞬迷った顔をした。彼はため息をつくと、自分の髪をくしゃりと掴んだ。
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