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「実はさ……俺のおじいちゃんの弟、つまり俺の大叔父さんに当たるんだけど、この人が君のおばあさんの知り合いだったんだ。だから……彼女がどんな人生を送ってきたのか気になって」 「ふーん、ただの知り合いってわけじゃなさそうね。もしかして……恋人だったのかしら?」  シャノンがいたずらっぽい笑顔を浮かべると、彼はギクッとした顔をした。彼の周りの空気が凝り固まって、まさにギクッという音が聞こえそうな勢いだった。すごく分かりやすい。 「あはははは、君って勘がいいね……。まぁ取り立てて隠すようなことでも無いんだけどさ」 「勘には結構自信があるのよ。まぁ、その話を聞いて納得いったわ。おばあちゃんの写真を見たことがあるってそういうことだったのね」 「そうだよ。大叔父さんの遺品の中にマルヴィナさんの写真が入ったロケットがあったんだ」 「大叔父さんは亡くなってしまってるのね……」 「うん。あの戦場で亡くなったよ。50年前にね」  彼女はハッと息を呑んだ。  おばあちゃんの元恋人はあの戦場で亡くなった……。  何かの縁を感じた。祖母はそんな話はしていなかったが、あの戦争は辛かったと話しているのを聞いたことはある。彼女は何か掴めないものを求めるかのように遠くをみつめていた。皺の寄った頬が一瞬若返ったようにも見えた。だがそれだけだ。自分がこの戦争について調べようと思ったのは、成長して改めてこの戦争の惨劇を知って心にピンときたからだ。調べなきゃダメなんだと。忘れてはいけないんだと。  そういう風に感じたのもこういった縁があったからなのではないか。 「どうしたの、シャノン」 「えっ?あぁ、何でもないわ。ちょっと考え事してたの」 「そうかい。どんなことを?」  ふと何かに気付いて顔を上げると、優しい目が彼女を捉えていた。何かを懐かしむような、でもどこか寂しげなその色にシャノンは心を奪われて、呆然と緑の瞳を見つめた。時が止まったように思った。周りのものが全て動きを止め、音もしなくなった世界に彼と二人きりになったような気がした。
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