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「詳しくは私もよく知らないわ。おばあちゃんは、図書館の司書をずっとやってた。戦争の後しばらく経ってから結婚したわ。子どもは2人。孫は私も含めて3人。子どもが生まれてからは司書の仕事は辞めたわ。それからはずっと家庭に入って私たち家族の面倒をよく見てくれたの。本当に感謝してるわ」
「そうか。幸せな人生を送ったんだね。安心した」
「どうしてあなたが安心するのよ」
ふふっとシャノンが笑うと、彼はまた寂しげな表情をした。
「大叔父さんは喜んでるだろうなって思ってさ」
「そうかしら」
「自分の遺してきてしまった恋人だった人が幸せな人生を送れたなら嬉しいじゃないか」
「私だったら嬉しい反面少し寂しいかもしれないわ。自分がまるで忘れられたみたいな気が少ししない?」
彼はざっくり傷ついたような顔をした。シャノンは自分の失言に気づいた。
一般論を話したつもりだったけれど、こんなの、おばあちゃんが彼の大叔父さんを綺麗さっぱり忘れてのうのうと幸せに生きたみたいじゃない。きっとそんなんじゃないはず。
「……ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの」
「いや、良いんだ……」
彼は弱々しく笑って言った。罪の意識でアイヴィーを少し上目遣いに見ながら、まるで自分のことみたいに悲しむんだな、とぼんやり彼女は思った。50年前に亡くなっているなら大叔父さんとは会ったこともないはずなのに。
「おばあちゃんのことについてもっと知りたいなら、もう少し調べてくるわ」
「本当に?それはありがたいな」
アイヴィーは少し元気になったようだった。店の温かい色の照明が彼の瞳に反射して穏やかな印象を与えた。シャノンはほっと息をついた。
きっと調べればおばあちゃんが昔の恋人を亡くなった後も大事に思っていた証拠が見つかるはずだ。彼女は人との繋がりを大事にする人だったから。
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