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 部屋に戻ると鏡に映った自分が目に入った。  そばかすの浮いた白い頬。ぱっちりした青い瞳。すっと通った鼻筋。ポニーテールにまとめた真っ直ぐな金髪。  自慢じゃないがそこそこ整った顔だ。若い頃の祖母の写真にそっくりな。鏡の中の自分に手を伸ばした。鏡の中の自分もこちらに手を伸ばしてきた。  特にそっくりな青い目の縁に手を沿わせる。懐かしい気持ちになった。 「……おばあちゃん」  彼女は急に亡くなった。本当に急だった。報せを受けた時は衝撃を受けすぎたのか涙も出なかった。呆然としたまま、それでも転がるようにして彼女の家まで急ぎ、そこで棺に収められた遺体を見た時に初めて涙がこぼれて止まらなくなった。あぁ、私ってこんなにおばあちゃんが好きだったんだ、と他人事のように思った。  鏡から離れて、携帯電話を取り出した。ベッドに座ると母親の電話番号を呼び出して電話をかけた。  数回の発信音の後に母の声がした。 「あら、シャノン。どうしたの?」 「ちょっと頼み事があって。今大丈夫?」 「大丈夫よー。何?」 「おばあちゃんの遺品を宿に送って欲しいの」  母は驚いたようだった。確かに今まで見たいと言ったことは無かった。 「急ねぇ。別に構わないけど、どうして?」 「おばあちゃんのことを知りたいって人がいるのよ。おばあちゃんの昔の恋人の親戚みたい。取材先で知り合いになって」 「あらそうなの。世間も狭いものねぇ……。私もおばあちゃんから昔の恋人の話を何回か聞いたことあるわよ」 「え、何それ、詳しく聞かせて」  つい携帯電話を持っていない左手でメモ帳と筆記用具を用意して食い気味にお願いしてしまった。ついでに録音できるようにICレコーダーも用意する。どうしてもライターの気質が出てしまう。  母は穏やかに笑うと、「良いわよぉ」と快く承諾してくれた。
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