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「お母さん、ありがと。この話彼に伝えても良い?」 「良いわよぉ。あ、宿の住所教えてくれる?」  録音していたレコーダーを切って住所を伝えると、母は笑って、 「相変わらずライター頑張ってるのねぇ。取材の仕方も板についてきたんじゃない?」 「そうかしら。頑張ってはいるんだけどね」 「その調子よ。応援してるわ。今度何か記事が載る時は教えてねぇ」 「うん、分かった。ありがとね」  その彼と何かロマンスがあったらそれも教えてねぇ、と盛大に爆弾をぶちこむと、反論の隙さえ与えずに母は電話を切った。アイヴィーの性別も言っていないのに、とんでもない母親だ。シャノンは苦笑いした。  ため息をついて、机に向かう。母に‘取材’した内容を文章にまとめたかった。  レコーダーを再生する。流れてくる母の声を頼りに、祖母の物語を取材ノートに書き綴った。  彼女の言葉をなぞる度に、ああ、この人は夫も昔の婚約者も大事にしていた人なのだなと実感した。言葉の一つ一つに愛が溢れている気がした。  シャノンは祖母が印象通りの人であったことに安心していた。本当は死んだ婚約者のことなんてすぐに忘れて結婚しただなんて思いたくはなかったのだった。おばあちゃんは、大好きなおばあちゃんの姿のままシャノンの心の中で優しく微笑んでいた。  早くこの事実を彼に伝えたい。彼の大叔父は、恋人に大切に思われていたと。  窓の外には満月が輝いていた。満月は優しく神秘的な光を放って家々の壁を白く照らしていた。  満足した気分でベッドに入ると睡魔はすぐにやって来た。その睡魔に身を委ねて穏やかな眠りにその身を浸す。心地良さが全身を包んだ。
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