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「ちちち違いますよ!!そんなわけありませんって、一昨日会ったばかりなのに!」 「ふふ、まぁ落ち着いてください。ちょうどお料理も出来たので」  目の前にほかほかと湯気を立てる料理が置かれた。食欲が湧かないと思っていたが料理を目の前にすると食べたくなってしまうのはなぜだろうか。 「……はい、いただきます」  ナイフを使って切り分けると肉汁が溢れた。ハーブの香りが食欲をそそる。一口食べるとつい頬が緩んだ。やっぱり美味しいものって良いわね。 「美味しいですね」 「ありがとうございます」  とりあえず食べた。何も考えなかった。あっという間に完食した。 「ご馳走様でした。食欲ないと思ってたんですけどペロッといけちゃいましたね」 「でしょう。主人の料理は本当に美味しいんですよ」 「ご夫婦でお店やってるんですね」 「ええ。結婚するなんて思ってなかったんですけどね」  えっ、とびっくりした顔をすると彼女は真剣な眼差しでこちらを見ていた。 「私達素直になれなくて。すれ違いも沢山しました。だからすれ違っているように見えるあなた達が放っておけないんですよ」 「……」 「きっとまた会えます。だからそんなふうに気を落とさずに彼を信じてみて下さい」 「……頑張ります」  素直にはいとは言えなかった。そんなに簡単に彼を信じられるほど私は彼のことを知らない。彼だって、そんな私を信じられるほど私のことを知らないはずだ。こんな風に繋がりを一方的に断ち切られて、もう二度と会えないかもしれないのにどうして彼を信じられるだろう。
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