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「……よく調べてあるね。大体は合っているよ。ただ、ここが違う」 「へ……?」  シャノンは呆然と彼を見つめた。細い指は、調べた時にも情報源があまり確かではなかった部分を指していた。その表情は真剣そのものだった。  さっきまでのおちゃらけた雰囲気はどこへ行ったんだろう。  彼はふっと笑った。同じ年頃の人だとは思えないような穏やかな笑い方だった。 「よく調べることだね」 「分かったわ。でも……どうしたの」  寂しげに、昔を懐かしむように男は微笑んでいた。その目が彼女へと向けられる。  息が詰まるような気がした。 「……何が?」 「いや、……何でもないわ」  シャノンの言葉を聞いて、今までの雰囲気は一体何処へやら彼はにやっといたずらっ子のように笑った。 「ねぇ、取材に協力するからさ、明日も会えないかな?」 「……ええ。指摘されたところ、よく調べておくわ」 「ありがと!じゃあ明日もまたこの時間にここで。気をつけて帰ってね」 「じゃあね」 「ばいばーい!」  別に勝負なんてしていなかったがなんだか負けたような気がして、納得いかない気分でシャノンは彼に背を向けた。彼に対する警戒心はいつの間にか消えていた。  日が沈んですっかり暗くなった荒野を、滞在している宿に向かって歩く。ここからそう遠くはない、宿のある町は夕闇にキラキラと光っていた。途中で後ろを振り返ると人影はもう見えなくなっていた。  ――彼は何者なのだろうか。  好奇心が掻き立てられる。きっと自分は明日約束を違えずに彼に会いに行くのだろう、とぼんやりと思った。
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