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 宿に戻って、持っていた資料を端からさらってみた。指摘された内容を早く確かめたかった。何冊もある資料を次々と捌いていくがなかなか見つからない。  なにくそ、という気持ちで探し続けた。負けず嫌いな気質が早く正しい情報を見つけろと叫んでいた。この気質が幸いしていつも良い記事が書けているのだと自分では思っている。世間での彼女の評価は高い。  だからこそ悔しかった。あんなちゃらんぽらんに指摘されるなんて。  彼女の部屋の明かりは明け方まで消えることは無かった。  翌日の朝、睡眠不足で眠い目を擦りながら町の資料館へ向かった。この町には戦争を忘れないため、戦争のことについて書かれた資料がたくさん置かれた資料館があるのだ。一度や二度ほど足を運んではいたが、しっかり調べられていたかといえばそうではない。何としてでも指摘された部分だけは正しい情報に直さなければ。  うとうとしながら数時間かけて探し、ようやく見つけた。もうお昼ご飯の時間はとうに過ぎていた。  探していた情報は、生き残った兵士へのインタビューをまとめたものの中にあった。戦いを経験した者にしか分からないことだ。  彼はこの町の住人なのだろうか。もしかしたらこの資料館であの戦争について調べたのかもしれない。  ほっとしたのか、いつの間にか彼女はその机に突っ伏して寝てしまっていた。  目が覚めたのはほぼ陽も沈んだ夕刻だった。  一瞬寝ぼけた頭でぼんやりと夕陽の差し込む窓を眺め、次の瞬間シャノンは飛び起きた。血がサーっと下がっていくのを感じた。  どうしよう、彼はもう帰ってしまったかもしれない。  とりあえず周りの資料をかき集め、あらかた片付けて資料館を飛び出した。重い鞄を背負って町の大通りを駆けていく。はぁ、はぁ、と息を切らせて荒野まで走り出た。その頃にはもう陽は完全に沈み、夕闇に荒野の岩や枯れ木が月の弱い明かりに照らされて不気味に浮き上がっていた。  待ち合わせ場所の、町に一番近い背の高い枯れ木の側に人影が月明かりで照らされてひっそりと佇んでいた。足音にゆっくりと振り向く。表情は見えないが、張りつめていた彼の雰囲気がほっと和らいだ気がした。
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